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金型の総合技術誌に特集されました

金型の総合技術誌「型技術」2021年11月号にて、当社が特集されました。
「モノづくりとダイバーシティー -多様化する金型・部品の製造現場-」と題され、当社代表安藤寛一のインタビュー記事が掲載されています。
以下に記事の内容を掲載いたしますので、ぜひご覧くださいませ。

型技術
【特集】
モノづくりとダイバーシティー
-多様化する金型・部品の製造現場-

中国人、ベトナム人を活用して
高品質な金属加工を推進

安藤木型㈱
安藤寛一代表取締役
安藤寛一代表取締役
会社概要

安藤木型㈱
金型、金型部品、工作機械用精密部品、メカトロ部品、開発型などの加工メーカー。
本社:愛知県西尾市東幡豆町鳶山1−6
安藤木型は1973年に創業し、1983年に法人化した。創業から2~3年は鋳造用木型を製造していたが、その後に自動車のモデリングに進出した。当時は1970年代中盤であり、まだCAD/CAMが普及していなかったため、自動車用モデルは木型で製作されていた。
同社はダッシュボード、バンパー、グリルなどの木型モデルを手掛け、その後は試作から量産まで幅広く金型の設計・製造を請け負うようになった。それを20年ほど続けたが、現在は一部でプラスチック成形用金型を設計・製造するが、事業の主体は精密機器部品や各種金型部品などの加工だ。そのほかに治具製作、3次元のモデリング、デザインモデルの製作も行う。
同社の社員は16人、そのうち女性は2人で、14人の男性社員のうち10人が外国人(中国人5人、ベトナム人5人)という構成だ。それについて安藤寛一代表取締役(以下、社長)は「特に意識したわけではなく、たまたまそうなった」と言う。「外国人だから、日本人だからという区別はまったくない。雇用条件も同じ。ただし、私は日本語しか話せないので国籍にかかわらず社内での会話は日本語で通しています」とのことだ。
愛知県内には57の商工会があるが、安藤社長はそのうちの一つ「西尾みなみ商工会」の会長を務め、商工会独自に外国(中国・ベトナム)からの技能実習生派遣事業を立ち上げた。2021年11月には同派遣事業を介して中国人実習生1人を同社でも受け入れる予定になっている。

木型から試作・量産型を経て加工業務をメインに

同社はホームページのトップページに「金属加工で困った時の安藤木型」のキャッチフレーズを掲げている。工作機械、ポンプ、モーダ、エンジン関係などさまざまな鋳造用木型で創造した同社が金型づくりを経て、金属加工業にシフトした経緯を安藤社長は話す。
創業2、3年後に鋳造用木型から自動車の木型モデルに転換しました。当時、これから鋳物業界は厳しくなるだろうと予測されていたので、同じ木型でも自動車のモデルづくりに重きを置きました。
その頃はまだCAD/CAMは普及しておらず、透き通ったビニールに描いた図面を自動車メーカーから受け取り、それをもとに松材を用いて型をつくっていました。そしてその木型モデルが自動車メーカーの設計、デザインの担当者から承認されると量産のための金型をつくるという工程でした。やがてトヨタ自動車の社内事業が独立する形でCAD/CAMシステムを開発・販売する情報システム会社・トヨタケーラムが設立され、当社もCAD/CAMを導入しました。この頃はCAD/CAMを学べる場所がなく、トヨタ自動車の社内で教育をしてくれました。そこへ5週間くらい通って何とか使えるようになりました。CAD/CAMが普及していけばやがて木型モデルの発注も減少していくと予想した安藤社長は、CAD/CAMとマシニングセンタ(MC)をセットで導入し、試作用金型へ事業の核を移していった。その後、試作金型だけでは受注が単発になってしまうために量産用金型も手がけるようになり、さらに設計から試作、トライ、量産まで一括受注するようになった。
しかし、一括で受注すると、材料の仕入れなど先払いしなければならないコストが増える一方、納品までの数ヶ月は入金がないため、収入と支出の間にタイムラグが生じて経営的には苦しかったです。しかも、海外で金型がどんどんつくられるようになった時期でもあり、海外の金型には価格や短納期の点で勝てないと実感していました。
そこで思い切って金型の一括受注を止め、不要になった形成機などの機械をすべて売却した。そしてその資金で工作機械を揃えて加工業に転換した。それが2008年のリーマン・ショックの前年であり、加工業に転換したことで経営的にかなり楽になったと言う。
業態を転換した当初は自動車のドアやグリルの金型を加工しました。現在、ワークのサイズは10~2,000mmです。材質は、鉄、ステンレス、アルミ合金、グラファイトなどさまざまに対応しています。また、当社は単品や小ロット品に対応できるのが特徴です。設備はMCを主体に形彫り・ワイヤ放電加工機、グラファイト加工機、研磨機、ガンドリルなどと3次元測定器を揃えています。3次元加工をやれる業者はそれほど多くありませんが、当社ではそれを駆使してプラスチック、ダイカスト、プレスと幅広く金型を加工できます。
プレス、樹脂、ダイカストと幅広く金型と部品を加工する

紹介から始まった外国人の採用

現在、同社の社員は日本人よりも外国人の方が多くなっているが、きっかけは知人の紹介で中国人留学生を採用したことだった。
15~16年前、日本の金型メーカーで働いていた中国人から「知り合いに仙台の工業大学を卒業する人がいるので雇ってみませんか」と推薦されたのがきっかけです。彼は今も当社に在籍しており、非常に優秀なエンジニアです。日本の大学に留学していたので日本語も堪能です。採用の条件は日本人と同じで、当時の初任給は20万円以上だったと記憶しています。
中国人社員はCAMによる加工データ作成から取引先との打ち合わせまでこなす
中国人社員はCAMによる加工データ作成から取引先との打ち合わせまでこなす
その中国人エンジニアから別の中国人を推薦されて2人目を採用し、さらに3人、4人と増えていった。
これまでに採用した中国人は皆、福建省の出身で現地の大学を卒業したエンジニアです。今まで1人だけどうしても日本に馴染めないと中国に帰国しましたが、現在では5人の中国人が働き続け、永住権も取得してマイホームまで買っています。
中国人社員のすべてが日本語が堪能なわけではないが、堪能な中国人が一人いれば通訳もしてくれるため、ほかの中国人社員が仕事に支障をきたすこともない。今では彼らもCAMで加工データを作成し、取引先との打ち合わせも日本語で対応している。
中国人と同様に5人いるベトナム人社員の採用も周囲からの紹介がきっかけだった。
当時、当社の中国人社員が住んでいたアパートの住人のベトナム人から「大卒のベトナム人が日本で働きたいと言っているが、雇ってもらえないだろうか」と声をかけられたのです。その頃には外国人は優秀という思いがあったので迷うことなく採用しました。
ただし、中国人に比べると日本語の会話への障壁は高かった。入社前に安藤社長が「当社での会話は日本語だけだよ」と念押ししていたが、実際には漢字文化圏の中国人に比べて言語にまったく共通項のないベトナム人では、日本語の習得はかなり難しいようだった。
そのため、同社の所在する西尾市の友好協会が開催している日本語教室に週1回通わせたが、なかなかすんなりとは上達しなかった。
ひらがなは書けるようになっても会話はなかなか上達しません。初めは身振り手振りのほか、絵を描いて仕事の内容を説明していました。中国人社員のように、留学生で日本語が堪能な人が一人でもいれば状況が違ったかもしれません。それでもベトナム人社員は全員がエンジニアなのでPCや機械に強く、3~4カ月もすれば工作機械を操作できるようになります。今は主に機械加工を担当してもらっていますが、そのうちベトナムのダナン工科大学出身の社員はCAMによる加工データの作成を勉強中です。彼は日本語がとても上手なのでゆくゆくは取引先との打ち合わせもできるのではないかと期待しています。
多くの外国人を雇用する安藤社長の目から見て、外国人と日本人との仕事に対する気質はどのように違うのだろう。
基本的には国籍ではなく個人差だと思いますが、あえて言うなら効率性だと思います。例えば、外国人は1つの加工機で加工を始めるとすぐに2機目、3機目を始動させて加工作業の効率性を優先させます。しかし、日本人は1つの加工機につきっきりになって作業します。生真面目であり、万一誤作動があってはいけないという思いが強いようで、効率よりも完璧さを求める傾向にあるように思います。

中小企業の人材に外国人は欠かせない

外国人の優秀さを認める安藤社長だが、今後の採用に関しては外国人に偏重する考えは特にないと言う。
外国人社員にはキツイ仕事に向かっていくガッツがある
外国人社員にはキツイ仕事に向かっていくガッツがある
日本人より外国人がいい、あるいは外国人より日本人がいいという区別はありません。現在の当社の社員構成比を考えれば、今後、日本人社員も欲しいとは思っています。ただ、中小企業を志望する日本人は少ないという現実もあります。あるいは、入社してもすぐ“仕事がキツイ”と辞めていく日本人も多いのです。一方、海外からわざわざ来日した人は大変でも頑張るしかないというガッツがあるように思います。
最近は中国も国内の賃金が上昇しているため、日本でも中国人を採用するのは難しくなると予測する。一方、ベトナムでも国内賃金は上昇傾向にあるが、中国よりはまだ低いため、今後はベトナム人の採用が多くなると考えている。

地元の商工会も外国人技能実習生派遣事業を始める

今、注目されているのが西尾みなみ商工会独自の外国人技能実習生派遣事業である。派遣事業に関して商工会が一部協力することはあるが、自ら運営するのは愛知県内で初めての試みである。
世界的な自動車メーカーのお膝元ですから、エンジニアや技能者が足りずにどこも困っています。その解消策として商工会が自ら派遣事業を立ち上げました。送り出す外国にとっても民間企業よりは商工会という公的組織が運営する方が信頼でき安心できるのではないかと考えました。また、人材不足で人件費が高騰している現在ですが、その点からも商工会の運営なら足元を見られて賃金を釣り上げるようなことはなく、適正な価格で紹介できるという利点もあります。当社でも2021年11月に1人、中国から来てもらうことになっています。
もはや人材不足は一企業だけでどうにかできる問題ではなくなっており、皆で知恵を絞っていかなくてはならないというのが安藤社長の考えだという。

医療機器部品加工への進出を準備中

同社の売上げの7割は自動車部品の金型加工が占める。しかし、自動車の電動化が進めば現在の自動車部品は種類・量とも減少する。そう予測する安藤社長は次の対策を準備中だ。
私は自動車部品の金型に未来がないとは思っていません。数年先には空を飛ぶ車が実用化されるのではないかとおおいに期待しており、自動車への夢や期待をもっています。
ただ、経営者の目線からすると7割が自動車部品用金型なため、偏りすぎている感はあります。リスク管理の観点からもう少しほかの分野に事業を広げていきたいと考えています。そこで準備中なのが医療機器部品の加工です。医療機器部品は多品種少量生産が多く、それは当社の強みでもあるので、win-winの関係になれると考えます。
時流に合わせて柔軟に事業内容や人材の受け入れ方を変えてきた安藤社長。すでに次のステップアップへと歩を進めている。
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